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歯の根管って、どのようなもの?

診療案内
Diagnosis and treatment guide

根管の構造

歯の根管って、どのようなもの?

歯の根管は、神経が通っている管のことで、湾曲したり、木の枝別れのように複雑な形態になっています。イスムスやフィン、根尖分岐など複雑な形態をしており、根尖の閉塞や急激な湾曲により根尖までファイルで穿通できないことも多々あります。
ほとんどの根管は湾曲しており、97%の根管が湾曲していると報告されています。エックス線写真上では見えない湾曲が存在することもあります。
中には側枝という、メインの根管の横道が存在する場合があります。側枝は根尖3mmくらいに多いです。
根尖部の側枝は、前歯部で80〜90%、臼歯部で60%を占めます。歯頚部では、割合が少なくなります。
イスムス(2つの根管をつなぐ溝状狭窄部)という溝もあります。
また、根尖の狭窄部には様々な形式がある(生理的根尖孔と解剖学的根尖孔が一致しない)ので、作業長の設定は手指の感覚だけでなく、複数の方法を併用します。
上顎第一大臼歯近心頬側根、下顎 大臼歯の近心根、上顎第一小臼歯など、扁平な歯根に多くみられます。
イスムス(根管の清掃が難しい部分)
イスムス(根管の清掃が難しい部分)
機械的清掃後に残存するスミヤ層の除去、器具の到達不能な側枝やイスムス内を清掃するには、十分な化学的洗浄や超音波洗浄が必要です。
  • イスムスIsthmusの拡大が不足すると、根管の清掃が不十分になるが、むやみに拡大してしまうと穿孔する恐れがあるので注意する必要があります。NCを根管にいれ、もう片方の根管から吸引していく様子を観察すれば、イスムスの存在が予想できます。洗浄を十分に行い、根管充填時にその部の密閉を図ります。
    加齢により、石灰化するためかイスムスは減少すると言われています。
    下顎第一大臼歯近心根の根尖部から3〜4mmの位置で80%の頻度でイスムスが発現します。
    上顎第一小臼歯、下顎前歯にも発現します。
    マイクロスコープでの汚染物除去や異物除去は、ピンポイン トで当てたい所だけに当てられるのが利点です。
  • フィンFinとは、根管の断面が側面に細く延びて、魚のヒレ状(鍵穴型)になっている狭窄部位です。
    いずれも機械的拡大だけでは汚染部の清掃が不十分になるので、洗浄などを丁寧に行います。さらに、再根管治療の際にガッタパーチャや感染が残るリスクが高いので注意が必要です。
    フィンは上顎第二小臼歯、下顎大臼歯遠心根、下顎前歯などに発生しやすい。
  • 側枝の取り残しは、神経や汚染物が残るため、レントゲンで根充がしっかり出来ているようでも、痛みが出たり、根尖部や歯根の側方に病巣の影が見える場合があります。
一人ひとり、またその歯ごとに個性があるようにそれぞれ別の形態になっています。(下の右模式図)
また、加齢変化に伴う石灰化(石灰化は歯冠側から起り、根尖から起るものではない)があり更に複雑な構造となります 。(エンドサクセスチップなどで対応)
  • エンドサクセスチップは、根管内で破折したエンドインスツルメントや残存ポスト等をより安全・確実に除去することも可能にしました。中でもET-25チップは、新しい合金であるチタン ニオビウム合金で超音波の伝導性に優れ、破折したエンドインスツルメントや残存ポストの除去に最適な超音波チップです。
マイクロスコープは、そのような歯の根の治療(歯内療法、根管治療)に絶大な歯科技術力を発揮します。
大臼歯といわれる奥歯の根っこの入り口は、3つあることが多いのですが、その歯によっては、4つ、5つ見つかることもあります。隠れた根管が見つかることもあります。
下の左写真、一番左側黄色の矢印の根は、さらに2つ(MB1、MB2)に分かれ、全体で4根管になります。
また、根管や根尖孔の断面形態は、円形ではなく、楕円形が多く、ひょうたん形をしていることもあります。
(楕円形根管では、ファイルが根管内壁に接触していない可能性があります。従って、ファイルだけの清掃では汚れが取り除かれません。)
上顎の臼歯(うわあごのおくば)の根管口 (左写真)
上顎の臼歯(うわあごのおくば)の根管口 (左写真)
複雑な根管の走行状態(右模式図)
複雑な根管の走行状態(右模式図)
平均的な歯根長は12mmです。根管の拡大はその上部1/3 根尖よりの約4mmを目標とします。

歯の根管数

上顎第一大臼歯:
近心頬側は2根管が45%見られる。MB2根の存在は珍しいものではありません。
CTレントゲン等を利用して調べると施術前に近心頬側2根の存在を高頻度で把握できます。
上顎第一大臼歯の近心頬側根が2根管性完全分岐根管であるのは57.3%、上顎第二大臼歯は37.5%というデータもあります。(ザ・クインテッセンス2015.7 vol34)口蓋根が2根管のこともあります。
上顎第一大臼歯の口蓋根の側枝 52.5% ( Caliskan1995 )と一番多い。 という報告もあります。( 続いて上顎犬歯 45.7% )
上顎第一小臼歯:
約80%が2根管である。3根管(約1%ある)
上顎第一小臼歯は2 根が多く、2 根管性や1 根管性もあります。なかでも2 根で2 根管が独立したWeine の分類タイプ3 が多く、次いで2 根管が根尖部で合流するタイプ2 が多く見られます。稀に3 根管もあります。
1根(59%) 1根管(18%)2根管(80%)3根管(2%)
2根(41%) 2根管(100%)
3根(1%)  3根管(100%)
歯根幅径が歯冠幅径に近い場合には3根の可能性が高くなります。
上顎第二小臼歯:
約50%が2根管である。
上顎側切歯:
9割程度が1根管だが、根尖5mm付近での唇側方向への湾曲が多いと報告されています。細いファイルを入れた時の根管の抵抗は、根管の狭窄ではなく湾曲である場合が多いので、無理な拡大はトランスポーテーションのもとになります。
下顎第二大臼歯:
約30%に樋状根(といじょうこん C-shaped root)が見られる。 樋状根とは、頬側で近心根と遠心根が癒合して、根尖孔が縦向きに楕円形状を呈しています。舌側には陥凹が生じており、根尖は舌側へ湾曲しています。根管の間はイスムスあるいはフィンであると考えてファイリングや超音波装置で清掃します。 欧米人に比べ 日本人の樋状根の割合は多いと言われています。
下顎側切歯:
2根管が34%見られる。扁平な形状なので複数根となる可能性がある。 下顎前歯では歯根が近遠心方向に圧平しているため、多くの根管は扁平な1根管あるいは2根管です。 下顎前歯は髄腔の形態と、舌側に第2根管が存在する場合があることから、根管治療時の窩洞外形は長楕円形にします。可能な限り切縁から、歯軸に平行方向にファイルを挿入すれば、扁平な根管の舌側の感染源を取り残しや、舌側根管の見逃しが防げます。
下顎第一小臼歯:
2根管が15〜25%見られる。根管へのアクセスは、歯冠軸に沿ってバーを挿入すると根管へのファイル挿入や舌側第 2 根管の探索が困難になるため、咬頭直下から挿入します。 根管の中央付近で舌側に分岐する根管形態が多く見られます。 デンタルエックス線写真で根管途中で根管が細くなっていたり、根尖付近での根の膨らみがないかなどを確認します。
下顎第一大臼歯:
4根管(遠心舌側根)が約25%見られる。4根管目を見逃さないため、髄腔開拡の形態は三角形より長方形の方が適していると思われる。
MM根(ミドル・メジアル根)は、10%程度、MD根(ミドル・ディスタル根)はさらに少ない。通常は近心2根管ですが、その真ん中にもう1根管MM根が存在する場合があります。根尖部で一致しているY字状である場合や根管口部は楕円形で根中央部あたりから2根管に分岐している場合もあります。
根管分岐は、上顎側切歯・小臼歯、下顎側切歯・小臼歯で多く認められ、根自体が分岐しているケースもあります。
見逃しが多い歯種は、上顎では第一大臼歯・第二大臼歯、下顎では第一小臼歯・第一大臼歯・第二大臼歯だと報告されています。見逃しの根管がある場合、汚染部の残存、根尖病変の出現、サイナストラクトや歯肉の腫れの原因となります。

■ 根管側枝について
上顎第一大臼歯の口蓋根、上顎犬歯で多く見られます。

根管治療が必要なケース

根管治療とは、歯の神経が入っている根の管の治療のことです。
虫歯が神経まで進んで(C3以上)しまったり、根っこに病気(根尖病巣)がある場合、根管治療が必要です。
深いムシ歯などで歯の神経を取ったあと、神経が入っていた根管をファイルと呼ばれる針状器具できれいにして(ラバーダム防湿なども用いて根治)、根の先まで薬を入れる処置(根充)を行います。
根管治療は、エンドendodonticsや歯内療法(知覚過敏、虫歯治療、根管治療、根尖治療を含む総称)とも呼ばれています。
根管治療(根治)が必要なケースには、次の2つが考えられます。
  • 1. 抜髄:歯髄(神経のこと)の炎症が強く、痛みもあるため、歯髄を取り除かなければならない場合。(歯髄炎、歯髄壊死、外傷により破折した歯など)
    歯髄を保存することは重要ですが、痛みが続いたり症状が一向に取れないような不可逆性歯髄炎に罹患している場合には速やかに抜髄処置を行う必要があります。放置すれば歯髄壊死などに移行し、気が付かないうちに根尖病変を作る恐れがあります。
    抜髄を行うことにより歯髄炎の継発症である根尖性歯周炎の発症を予防することができ、さらに急性症状からの苦痛を軽減できます。
  • 2. 感染根管治療:すでに歯髄は死んでしまい、根管を通じて感染が根の先の部分に及ぶ場合。(根尖性歯周炎) さらに病変(根尖病巣)ができている場合。一度治した根管の再治療の場合。(再根管治療といい、最も難しく成功率が低い。)
    ( もし、初回の抜髄処置が上手くできていれば、やり直しの再根管治療は必要のない処置です。)
    残念ながら、根管治療は、再治療を繰り返すほど成功率が下がります。従ってマイクロスコープによる確実な治療が望まれます。
かぶせ物などの土台となる根の治療なので、「歯を残す」ためには最も大切な処置なのです。
建物で言うと基礎工事の部分です。
根管治療 = 歯内療法(狭義) = 歯の根っこの治療=神経を取った根っこの治療は、同じ意味です。(神経を保護して残す治療は生活歯髄療法Vital Pulp Therapy(直接覆髄法、間接覆髄法)と呼ばれています。)

■ 歯根の内部吸収、外部吸
内部吸収とは、歯髄腔側から起こる吸収のことです。前歯部に好発し、慢性歯髄炎に起因するので、処置は残っている神経組織を取り除くことです。
外部吸収とは、歯の外側の歯周組織側から起こる吸収のことです。外力(外傷、外傷性咬合、矯正力)、炎症、嚢胞、腫瘍、再植、移植などに起因します。

根尖病変の主要因

  • 根っこの炎症の原因
    根尖性歯周炎の原因は「細菌」です。 このことはKakehashi S. (1965)の実験で証明されております。
    普通のマウスの歯を削り、露髄させると(神経に穴をあける)全ての歯の神経が死んでしまい、根尖性歯周炎がみられました。一方、無菌のマウス群は神経の治癒がみられ、健康な状態のままだったいう結果です。
    ・神経が生きている間は根管内に細菌は存在しない Haapasalo M et al.(2003)と報告しています。このことから、「細菌がいなければ根尖性歯周炎が起こらない」ということが証明されました。
    ・細菌の侵入経路は、唾液に混入、虫歯の感染層、汚染された器具などです。また、神経の取り残しがあると細菌がそこで増殖します。
根管の中に唾液に混ざっている細菌を新たに入れないこと、かつ無菌状態で治療を進めることが非常に重要です。根管中部〜上部の感染が原因となっていることも多く見受けられるのです。
  • 根管治療のポイント
    根管治療では根管内の感染源の除去と根管内への再感染の防止が大事です。
    感染源の除去をするには、根管形成(根管の機械的拡大)と根管洗浄(根管の化学的清掃)がポイントとなります。
    感染源は根穿孔部だけではありません。主根管の見逃し、フィン・イスムスの見逃し、根管内分岐の見逃し、などによる感染が大きく関与することも多いのです。
    最終的には根管充填により根管内に感染源を封じ込め、再び新たな感染が生じないようにします。
    ※ 歯内療法の臨床的な成功は、感染源の根尖孔より内側への閉じ込めが達成されたことに起因している場合が多い。
    根管充填後は、放置せず修復まで行います。
    もし放置すれば、根管充填材と根管壁の間を経由して根尖側への漏洩が生じるコロナルリーケージ(歯冠側からの漏洩)が生じます。実験室レベルでは早くて30日、遅くても90日程度で根尖まで細菌感染が達すると報告されています。イスムスやフィンの封鎖が十分でなければ、根尖までの漏洩はさらに短期間で生じます。
    修復処置においても根管の感染を意識した処置が必須です。