1. 歯の自然感、立体感を表出するグラデーション技術 (ブルー括弧部)
歯の根元から先端部に至る色調と明暗のグラデーション、隣接面部から歯の中央部に至るグラデーションで自然な立体感を表現します。また、歯種によって異なる深みを付けていきます。
そうすることにより、お口全体に統一感が現れ、より自然で魅力的な印象となります。
天然歯と同じく自然な凹凸感を作ることにより、リアリティーの高いセラミックとなります。
天然歯の表面は、単一でツルツルではなく、成長に伴ってできる成長線があります。
石灰化度や色の違いがあり、縞模様や凹凸として見えます。
隣接歯や対合歯を参考に違和感のないように仕上げます。
3. 歯茎のラインをキレイに魅せる技術 (オレンジ円部)
術前にはプラークコントロールを充分に行い、歯茎を整えておきます。
歯茎から出血しやすい状態では、歯肉との境目がガタガタになるばかりか、セットの時に出血が混じるとそれがセラミックに汚れとして映ってしまうので注意が必要です。
以前行われていたメタルボンドは、内面に金属を使うので、歯茎のラインは黒いくすみが出来ていましたが、オールセラミッククラウンでは、歯茎の色が自然になります。
歯肉の中間部の厚みで歯茎内側から0.5mmのクラウン立ち上げを基準とし、その方の歯肉の厚みに応じてコントロールします。もちろんマイクロスコープを使った拡大視野下で、凹凸のない滑らかなマージンの形成を行います。
型取りの際、歯肉をよけて歯の周囲の形をしっかりと出すため、歯の周りに圧排糸を巻きつけます。二重コード法でマージンをはっきりと記録します。これにより通常より正確な型取りをすることができます。
マイクロスコープを使って精密に歯冠形成を行うことにより、高いレベルでキレイな歯茎ラインを作ることが出来ます。
切端と言われる歯の先端部は、歯の厚みが薄くなるとともに、透明感があります。
特に若い年齢では透明感が強く現れ、年齢とともに弱くなる傾向があります。
各年齢や性別に応じて作成します。
向かって左側の大きい方の歯がオールセラミッククラウンで、先端部を透明色に仕上げてあります。向かって右側の小さい方の天然歯と、同程度の透明度に仕上げてあります。
5. ファイバーポストコアを土台に使用 (グリーン円部)
グラスファイバーは透明感があり高い審美性を有しています。
「ファイバークリアポスト」というファイバーポストコアーは、光透過性を持ち、シランカップリング処理(接着の処理) がなされています。レジンコア材料との接着性に優れています。レントゲン造影性があります。ファイバーポストは、ガラス繊維を70 %以上含有し、曲げ強さが700 MPa以上のものです。
適度な弾性率30Gpa(象牙質20Gpaに近似)があるため歯根破折の防止となります。
オールセラミックと併用することによりメタルフリーの治療(金属アレルギーへの対応)が可能となります。腐食抵抗が高く、歯質の変色が起こらないのが特徴です。
しかし、歯冠部の歯質がほとんどないような場合には、破折・脱落のリスクが大きくなります。そのため金属の支台築造を用います。
セラミックの色調コントロールは、ステイニング法、カットバック法、レイヤリング法などがあります。
レイヤリング法は、唇面全体をカットバックしておき、ベニアリング陶材による多層築盛で色調再現を行います。より高い審美修復が可能になります。
ステイニングは、表面に細かな色の濃淡をあたかも絵の具を塗るかのように色付けをして仕上げる方法です。
支台歯の濃い色調やメタル色を目立たなくするため、内部にオペーク処理(歯冠色が明るいほど難易度が上がります)をします。
オールセラミックの素材は、単一ではありません。
ジルコニアと言われる硬いセラミックから、歯と同等の硬さを持つセラミック、色調を出すのに優れているがやや硬さの劣るセラミックなど様々です。
その中からその方に合ったセラミックを選択します。
一本の歯を何種類かのセラミックにより作成し、色調を自由にコントロールできる高度な技術を持ったテクニッシャンにより製作されます。
対合歯が硬い金属の場合、歯ぎしりなどが加わると摩耗が激しくなることがあります。
対合歯や咬合なども考慮して作成することにより、長期安定したクラウンを目指します。
また、長期間安定したセラミック冠の装着や維持のためには、歯周病管理(歯肉からの出血、発赤や腫れをさせない)が大切なポイントです。