虫歯発生の最初の変化は、プラーク中の細菌が産製する酸によるエナメル質が脱灰することです。初期にはエナメル質表層下の脱灰によって白濁・ 白斑を示します。歯頚部(歯の根もと)に多く見られ、表面がザラザラで光沢がありません。矯正治療中で磨きにくいプラケット周辺にもみられことがあります。学校歯科保健で用いる CO (シーオー) の状態です。要観察歯 (CO Caris Observasion(カリエスオブザベーション)) のことです。
エナメル質表層下脱灰(虫歯の初期段階の最初のステップ)は、う窩、すなわち歯に穴が開いていない状態であれば、再石灰化を期待できます。肉眼的には、歯牙表面に透明感がなくなりチョーク様の白色をしている状態です。
表層下脱灰(歯の表面からカルシウムの結晶が溶けだす)病変には実質欠損がなく、エナメル白斑(ホワイトスポット)と言われる状態です。
しかし、プラークを丹念に取り除き凹凸が判明した際には、不可逆的変化と捉え、別の方策を考慮しなればなりません。
白濁が見られるのは、初期の虫歯の状態です。(矢印)「ホワイトスポット」と呼ばれ、歯のミネラルが溶け出して、表層下脱灰層 (初期むし歯)が起こっています。
特に、萌出後早期に発生した白斑は、むし歯への進展速度が極めて速いので注意を要します。
適切なブラッシングやフッ素塗布などが有効です。その進行を停止させ、さらには再石灰化により病変を改善させることを期待します。再石灰化を促進するためには、ブラッシングでプラークをきれいに落とすこと、唾液が充分に歯の表面に接触できるようにしておくこと、フッ素配合の歯みがき剤を使用すること、フッ化物洗口を併用するなどの予防処置が大事です。もし放置すれば、進行していき、修復治療(削って治す)が必要な虫歯となってしまいます。
フッ素や歯科医院のメインテナンスでお口の中をきれいにして、毎日のセルフケアでも口腔内を清潔に保つことが大切です。
虫歯の治療でマイクロスコープを使って微妙で正確な操作が求められる場面が多くあります。
診療の質を上げるうえで、大切になります。
- 歯と歯の間の虫歯の治療(隣接面)
- 歯の間は歯ブラシが届きにくく、表から見えにくいことから虫歯が進んでしまうことが多い部位です。
専用のMIラウンドバーなどを使用して治療、マイクロスコープでミラー角度を変えて虫歯の取り残しがないかをチェックします。
静止画像として、じっくり観察、考察します。隔壁をぴったり合わせて充填します。
隣在歯とのコンタクトの回復、対合歯との咬合の回復、歯間固形空隙を整える等が必要。
- 虫歯と健康な歯質との境目
- 超音波チップやマイクロ用エキス日ベータなどを利用して、健康な歯質は残す。
切削バーではなく超音波チップを用いると微妙なコントロールができる。
そのためにはマイクロスコープを覗き、超音波チップの先端を巧みにコントロールしていきます。
その先端にはダイヤモンドコーティングがしてあり微小切削が出来るようになっています。
バー (通常歯を切削するタービンの先端部) だと削り過ぎてしまう。
- 歯と歯肉の境目(歯頚部)
- 歯に糸を巻いて歯肉圧排などで辺縁を明確化した上で治療
歯肉からの浸出液の処理が必要な場合もある。TDゼット液やビスコスタット(硫酸鉄20%の滲出液抑制ジェル)を用います。
精密印象採得の際にも大事な処理です。
もし、浸出液があればその部の形は浸出液の手前までとなりなめられた」状態・歯根の立ち上がりも不明の不適合な型になる。
ラバーダムをかけても歯肉が圧排されて視野が明示でき、乾燥状態での治療が可能で、充填物の精度が上がります。
歯頚部には、エナメル質とセメント質の境界があり、知覚過敏がよくみられる部位でもあります。
より精度の高い適合が求められます。
- 修復物と自分の歯との境目
- 接着用の余剰セメントが残らないようにチェック
虫歯を修復しても小さなギャップ(マイクロリッケージ)があれば、さらに小さな細菌はその中に入り込みます。そして再び虫歯が起こってきます。
そこでマイクロスコープを使用して、歯と修復物の間の隙間からできる虫歯を防止します。
金属などの硬い修復物は、天然歯をすり減らしたり、咬耗による段差を招きやすいので、たびたび咬合調整を必要とします。(特に硬いものを好んだり、歯ぎしりをよくする方)
逆に軟かい詰め物(CRなど)では、再修復の必要が出てきます。
フリーエナメル(象牙質の裏打ちのない部分)は、欠けてくるので、修復物との間に隙間を作ってしまいます。その部にプラークがたまり、再び虫歯を作る可能性があるので形成時に注意深く取り除きます。
修復物の接着の際には辺縁部の確実な接着と、余剰セメント(接着剤)の十分な除去が大切です。
長期間の経過の後、修復物との適合が悪いために辺縁部に隙間が出来たなら、その部にプラークが溜まり問題を起こすので、細かな配慮が必要です。
フロスが引っかかる場合、この境目に隙間がある為、虫歯になっている可能性があります。
また、フロスの際、修復物の辺縁を引っかけてしまい、めくれ上がって問題を起こすケースも考えられます。
このような経年的な変化に対応して修復物を再生しなければならないこともあるのです。
- 虫歯=感染部分の除去
- 顕微鏡が、得意とする分野の一つです。カリエス(う蝕)検知液を使い、鋭利なスプーン エキスカベーター、MI用ラウンドバーで病的部分を除去します。進行しているう蝕(虫歯)では、健康な歯と同じような色をしているため、病的部分との見分けがつきにくくなっています。
感染象牙質は、健全な歯質よりも軟化しているので、鋭利な器具で除去できます。(うろこ状に剥がれてきます。)もし取り残しがあれば、内部で気が付かないうちに虫歯が広がっていくことになります。
マイクロスコープを覗いて器具で押されてへこむ(感染して歯が脱灰を起こし柔らかくなった)部分を除去した後、う蝕検知液で虫歯の感染部分の取り残しがないかを調べます。
ミラーで窩洞周囲を隅々まで点検します。
感染部の取り残しは、虫歯の拡大、根管から根尖への汚染につながります。
予後にも影響する大事なところです。
- 虫歯(エナメル質表層にできた虫歯)
- 再石灰化の可能性がある部から、いわゆる「初期の虫歯」と言われる白濁して歯が脱灰されている部あるいは、奥歯の溝がスティッキー様に黒なっている部まで指します。
それらの部は、再石灰化が可能か、予防処置が必要か、さらに進行していて修復しなければならないかをマイクロスコープなどにより見分ける必要があります。
- エナメル象牙境
- 虫歯が横へ広がる部位なので十分な診査が必要です。
虫歯は、エナメル質では、裂溝の入口を尖端とし、象牙質側を底面とした円錐形を呈します。
エナメル象牙境に達すると側方に拡大して進行し、象牙細管の走行方向に沿ってさらに深部へと進行していきます。象牙質では、エナメル質側を底面とし、歯髄側を尖端とした円錐形を呈します。(う蝕円錐)
う蝕(虫歯)検知液を塗布して虫歯の部分だけをしっかり取り除き、健全な歯質を極力残す事が大切です。
- 歯髄(歯の神経)が近接している場合の処置
- 虫歯の部分を取り除くと歯髄が近接して赤く見える(ピンクスポット)ことがあります。適切な覆髄処置を行い、歯髄を保護します。
また、髄角部露出のように、ごく小範囲(2mm幅以内)の非感染性の露髄(露髄面が感染されていないこと)を生じたときには直接覆髄法を行います。
覆髄法では、歯髄を保護し、再石灰化、修復象牙質の形成が促進されることを期待します。
もし、強い痛みがあるような場合には、歯髄の感染が疑われ、抜髄をせざるを得ないこともあります。