マイクロスコープ(顕微鏡歯科)は、精密な診療を行い、手術後の外科的侵襲の低減や、確実に病変を除去するために用いられます。
従来の治療法に比べて一回の治療時間は長くなりますが、より確実な結果を得ることが出来ます。
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1.精密な治療ができる。(適合精度が高く、仕上がりがきれい)
拡大視野は、治療に大きな可能性を与えてくれます。
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2.正確にできる。(削りすぎない、丁度に合わせる事ができる)最小限の侵襲で最大限の効果を引き出す「MI治療」を実現します。
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3.詳細な診断がしやすい。(今まで見えなかったものが見える、正確な診断が出来る)
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4.再発のリスクを減らす。(虫歯や根管治療において感染部の取り残しを防ぎ、精度の高い治療が可能)
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5.根管やポケットなどの内部に光が到達して観察できる。(観察する方向に光が届く)
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6.視野の隅々まで同倍率で見える。(虫メガネや拡大鏡のように辺縁が歪まないので、正確な大きさを捉えられる。)
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7.見る角度と光の照射角度がほぼ同じなため、見えるところに光があたり影ができにくい。
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8.背筋を延ばして楽な姿勢で治療できる。(疲れない姿勢で治療できるので精密治療でも集中できる。前屈みの姿勢をしなくてもよい。)
拡大鏡を使用した場合は、ピントを合わせるのに姿勢を変えて頭を前後に動かす必要があったのです。
拡大視野へのピント合わせは5分間に35回を数えると言われています。拡大鏡では、診療へ集中する以外に力を注がなければいけません。
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9.術前の診断、精密な治療、術後の評価と各ステップで的確な判断ができる。
拡大視する事により、正確な状況判断が出来る。
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10.術前の診断、精密な治療、術後の評価と各ステップで的確な判断ができる。
拡大視する事により、正確な状況判断が出来る。
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11.汚染物が見つけやすいので、確実に除去できる。
今まで見えなかった歯の隙間や歯周ポケットの奥深い部分にあるプラークや根管内の汚染物が発見しやすくなります。
特に歯科疾患の原因を作る歯垢(プラーク)は、細かいすき間(ポケット、修復物との間、冠の下側、歯の亀裂など)から侵入して炎症や虫歯を起こすことになります。従って、これらの隙間部を確認てきるか、原因となるものを除去できるかが重要で、治療と予後に大きな影響を与えます。
※クラックとは : 歯に不完全な破折をきたし、ヒビ割れ(亀裂)が入っていると、咀嚼時の痛み、温度変化による疼痛、歯髄の炎症症状などがみられます。
食いしばり、歯ぎしりが原因の場合もあります。
クラックの出来た位置、深さ、大きさにより処置可能な場合から抜歯に至るケースまであります。
マイクロスコープにより、診断能力の大幅な向上につながりました。さらに詳細に、しかも鮮明に見ることが出来るので、高度な先進的歯科治療をご提供できます。
細かい辺縁、隣接面、微細部分まで、特殊インストゥルメント、器械で治すこともできます。
特に審美の精密治療、
歯の根の治療(歯内療法、根管治療)、手術(インプラント、歯周外科、抜歯手術等)、健康歯肉を維持するための歯面クリーニング(歯石除去と歯面研磨)などに絶大な歯科技術力を発揮します。
また、マイクロレベルの精密切削と人工歯冠物適合への応用は、審美的に優れているだけでなく、歯周炎の発症を未然に防ぐ(精密治療により適合が良くプラークがたまりにくくなるため)という相乗効果もあります。
プラーク(歯垢)は肉眼では見えないほどのほんのわずかなすき間(歯の凹み、歯と修復物の間、歯と歯肉の間など)から入りこみ、歯周炎や虫歯の原因になるのです。
マイクロスコープを使ってそれらの原因を探る事は、「予防」という観点からも重要です。
さらに、ミクロの画像を視覚的にモニターに映し出し、どのような状態なのかを患者様自身の目で確認していただくことが出来ます。この様な情報の共有は治療を進めるうえで大切だと考えます。
歯科用顕微鏡は、的確な診断、最良の治療、予防、そこに至るまでの十分なインフォームドコンセントに効果的なアイテム(視覚的に画像として見えるので理解しやすい)なのです。
マイクロスコープにより
MI治療(最小限侵襲で最大の効果を得る治療) がはじまるのです。
マイクロスコープの治療風景
精密審美治療をしています。
適宜介助は重要なアシスタントの役割
充填(つめもの)をしています。
マイクロスコープによる拡大率は、3.4〜21.3倍です。
肉眼の最大で21.3倍に拡大することにより、 その情報量は、なんと肉眼の453倍(縦21.3×横21.3)となります。
この圧倒的な情報量は、高度な技術を必要とする治療の診査・診断には欠かせません。
5段階の手動変倍機構により全体像の観察から細部の観察まであらゆる倍率域において自然で立体感のある画像が得られ、正確な診断・精密な治療を行うことが可能となります。
実際に使用する際には、作業する倍率と、観察する倍率を使い分けて治療します。
バリオスコープ OPMI pico シリーズに「LED 照明」と「バリオスコープ」(対物レンズ)が追加されました。
焦点範囲が広くなり(被写体から200ミリ〜300ミリまでの広範囲でフォーカス調整が可能、100mmの範囲で焦点が合う)、診療姿勢の自由度が向上することにより、マイクロスコープによる質の高い歯科治療の実現に貢献できます。高倍率になるほど困難だったピント合わせから解放されます。
マイクロスコープを使うと、今まで見えずにわからなかった事が確認でき、治療に生かせます。たとえば、虫歯は、歯が虫歯菌によって産生された酸で溶かされる現象です。
歯の表面のエナメル質の表層下で脱灰が進み、最表層部が内部を守り、膜の役割を果たします。
ミクロ上では、再石灰化により、脱灰を食い止めています。
最表層部で脱灰を食い止める事ができなければ虫歯になるのです。
プラークを取り除くいてマイクロスコープで観察すると、どの段階にあるのかがわかります。
その段階に応じて、適切な処置を行う事ができます。予防処置に幅ができ、選択肢が広がったと言えます。
CTレントゲンで画像診断を下してからマイクロスコープで実像を観察
歯科用CTとマイクロスコープは、「審美性、機能性、永続性・安定性」を達成するための強力なツールとなるでしょう。
精密な診療を行うには、正確な診断と、精密に治療を行う手段が必要です。
マイクロスコープで拡大明示し、必要に応じてCT撮影による3次元の診断も合わせて治療を進めます。
歯科用CTレントゲン撮影は、歯や歯槽骨、顎関節、アゴの内部まで3次元的に詳細にチェックできます。
コンビームCTとも呼ばれ、低線量でアーチファクト(金属の反射)を最小限に抑えて鮮明な画像を得られます。
歯や歯肉の表面からは分からない情報を把握することで、より的確な診療を進める事が出来ます。
虫歯、根管治療、歯周外科やインプラント手術などの際、直接見えない内部の検討をCTで十分に行った後、施術します。
マイクロスコープやCTの分析結果に基づいて精密診療すれば、さらに良い結果を得られます。
歯内療法とは、歯髄すなわち歯の神経を保護する処置(覆髄)から神経を取り除き根管治療をするまでの歯の内部の処置のことを指します。覆髄、抜髄、根管治療などがこれに含まれます。
その各ステップにおいて、顕微鏡治療は活躍します。
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1.歯冠・歯根のヒビ(クラックトゥース)の診査
歯根のヒビが原因でそこから細菌が入り込み歯肉に炎症を起こす事があります。
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2.覆髄処置
歯の神経を保護する処置
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3.修復物漏洩(修復物を接着しているセメントが一部外れかけていないか)
神経が残っている場合は歯がしみる原因になりうる、外れてしまった場合内面に汚れが残っていれば、しばらくの期間その部が外界にさらされて汚染されていたと考えられます。
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4.根管内汚染物の除去
髄角部、イスムスやフィン部、根管壁部等に残っている細菌や壊死組織、感染象牙質などを除去します。
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5.根管口探索
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6.穿孔の修復
虫歯が深い場合、歯質がなくなり歯肉が露出していることもあります。
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7.根管の探索
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8.根管拡大・形成
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9.根管内の破折器具の除去
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10.根管洗浄
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11.外科的歯内療法(歯根端切除手術)
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12.根管充填
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13.予後の診査などです。
診断、感染源の除去から根管の封鎖、予後観察まで各ステップにおいて、マイクロスコープは活躍します。
クラウンやインレーなどの金属を取り除く際、咬合面に小さな穴をあけるだけで撤去を可能にした「イージークラウンリムーバー」という器具があります。その穴を精密に開けるために顕微鏡を使い、修復物の浮き上がり具合もチェックしながら負担をかけないように除去します。
マイクロスコープを使うと除去する際のわずかな動きを判定できるので、残存歯に無理がかかりません。
撤去した修復物は小さな穴だけで除去してあるので、テンポラリー(仮歯)として使用することも可能です。
前歯部では審美性を損なわず、臼歯部では咬み合わせの機能を損なうことなく次の治療ステップに進みます。