歯内療法
歯の神経をとったり、再治療などの根管治療、神経を保存するための治療のことです。
歯内療法(しないりょうほう)には、抜髄、根管治療、覆髄などの治療があります。
根尖性歯周炎
虫歯を放置したり、過去に抜髄や根管治療を受けた歯では、根管内に侵入した細菌が
根尖より外部にあふれ出し、根尖の周囲に炎症が生じてくることがあります。このような状態をいいます。
細菌以外の刺激(外傷性咬合、根管治療器具の突き出し、化学的刺激、根管充填剤)でも炎症が起こる可能性があります。
感染根管
歯の内部にある神経の通っていた根管が感染してしまったものです。虫歯が歯髄まで進行して歯髄が感染壊死したり、外傷で神経が壊死感染する場合、不十分な根管治療で根管が感染している場合があります。
根尖病変
根管に感染が起こると、痛みが出たり腫れたりすることがありますが、通常は弱い慢性的な刺激が 多いので体に細菌が入らないように根の先端に防御帯を作ります。 これが根尖病変で、エックス線では黒く写ります。
歯根嚢胞
慢性根尖性歯周炎に併発して起こる袋状(歯根肉芽腫に上皮の増殖を伴うことで出現)のものです。 漿液または粘液などの内容液あるいは半固体の内容物を含みます。真性嚢胞の場合には、根管との 交通がなく根管処置の影響を受けにくいため歯根端切除術等の外科的処置を考慮する必要があります。
レッジ
本来の根管とは異なる方向に削れた段差のことで、湾曲根管に起こり易い。 オリジナル根管から外れたレッジ形成をしないためには、ファイル回転を避け押して使用することです。
本来の根管が維持されている再根管治療の症例は成功率が89.8% と高い。レッジやトランスポーテーションなどにより本来の根管をすでに逸脱している症例では47% にまで成功率が下がる。Gorni FG,2004
ジップ
湾曲の外側が過度に根管形成されてしまうことで、湾曲根管に起こり易い。
トランスポーテーション
根尖部付近で根管が直線化を起こし、オリジナル根尖孔とは別の位置に移動した物。
ほとんどの根管が湾曲しおり、その湾曲した根管に器具を入れて不用意に拡大・形成を行うとオリジナルの根管を逸脱した根管形成となるので注意が必要です。
パーフォレーション
根管内から根管外に穿孔してしまった事です。 MTAセメント等によるパーフォレーション・リペア(根管内穿孔の修復治療)が行われます。
プレカーブ
根管の複雑な三次元的な屈曲を再現するため、ファイルにあらかじめカーブを付与しておくことです。
フェルール
失活歯の歯冠形成時に、歯冠側に存在する健康な残存歯質を抱え込む部分のことです。 フィニッシュライン上に高さ約2mm以上の健康な残存歯質があると予後が良いとされます。
アピカルシート
根管充填剤が根尖孔の外に逸出しないように、ファイルを操作する時、根尖狭窄部手前につける 段差のストッパーのことです。
ラバーダム隔壁法
ラバーダム防湿をする際、歯の周りの壁(隔壁)がない場合、コンポジットレジンなどで修復して 壁を作りラバーがかけられる様にして唾液の侵入を防ぎます。
再根管治療
以前に根管治療を受けているが、根の先に膿みが溜まっていたり、根に詰める薬が 十分に先端まで詰まっていなかったり、症状が消えないなどの際、再度根の治療を やりなおさなければならない時の治療です。再度治療を繰り返すごとに治療の難易度が上昇します。 従って、根の治療は1回目の抜髄が最も重要なのです。
エンド三角
根管治療をする際、根管口の入り口にある側壁は根管内部へのアクセスを邪魔します。 その側壁の断面は三角形をしておりエンド三角と言い、その部の除去により根管形成は スムーズに行われます。根管口を塞ぐ象牙質の張り出しであるエンド三角除去は、 ファイル破折リスクを減らすためにも必要です。
表面反射ミラー
反射像が二重にならないようにロジュームコーティングなどの表面処理がしてある歯鏡です。 高反射率を有しており明るい反射像が得られるため、マイクロスコープを使用した治療に適します。
水酸化カルシウム
根管治療の貼薬剤です。強アルカリのため殺菌力が強く、現在、全世界的に ゴールドスタンダードの薬となっています。抗菌作用、組織溶解作用、根管内乾燥作用がある。
EDTA
根管治療の際15〜17%のEDTAを用います。根管壁を脱灰し軟化させ根管拡大形成をする、 化学清掃、潤滑剤、次亜塩素酸ナトリウム溶液との併用による発砲でスメア層や切削粉を除去などに 使用します。
MTAセメント(商品名 プロルート)Mineral trioxide aggregate
主成分は、ポルトランドセメント(建築用)ケイ酸三カルシウムで、造影剤など加え歯科用として、1998年に製品化されました。「水酸化カルシウム徐放性材料」で新生硬組織形成能や抗菌作用(pH12.5)をもつ水硬性セメントです。 直接覆髄、根管充填、パーフォレーションリペア等として用いられています。 生体適合性(デェンチンブリッジの形成を確認)、封鎖性(外来刺激の遮断)に優れています。
MTA の上には、セメント質が直接再生されること報告されています。セメント質にはシャーピー線維を伴う健全な歯根膜の再生の可能性があり、理想的な治癒形態だと考えられています。
歯髄
歯の神経の事です。中に血管、神経が入っており、感覚機能をつかさどる、 刺激から防御する第二象牙質を形成するなどの働きがあります。
石灰化
歯髄結石、根管の閉塞等の形で歯髄の石灰化がみられます。 原因は、加齢、摩耗、むし歯、外傷、歯周病、 矯正、全身疾患などが考えられます。 根管が狭くなるため、治療の器具の挿入が難しくなり根管治療が困難となります。
覆髄法
虫歯の除去中に、歯髄の一部が露出し、露髄面が極めて小さく、その周囲が健康歯質で覆われて いる(感染していない)場合、覆髄剤で露髄面を覆って歯髄を保護します。 第二象牙質の形成により露髄面が閉鎖することを期待します。
ファイバーポスト
グラスファイバーの軸で補強されたプラスチックの土台です。根管治療後の土台として 使われます。しなやかさがあり歯根破折防止になるので歯にやさしいと言われています。 長所は、歯根破折防止、審美性の向上、金属アレルギーへの対応、セラミックとの接着性向上です。
ミニマムインターべンション Minimum Intervention
最小限治療のことを言います。顕微鏡により ダメージを最小限に治療して、最大の結果を残します。
隔壁
根管治療を行う際、残っている歯質が少なくラバーダム防湿が困難で無菌的処置が できない場合、歯の周囲にレジン等で土台を築くことを言います。
樋状根
C型の形をした根管で、頬側で近心根と遠心根が癒合したものです。根の先端の穴(根尖口)が どこに開いているのかが見つけずらいので難症例になります。 近心頬側根と遠心根は網目状に根尖付近まで交通しています。(超音波ファイルにて掻爬の必要がある) 発現頻度は下顎第二大臼歯では28.9%,下顎第三大臼歯では10%です。(1941中山ら) Fan ら(2004年)の研究によると、樋状根管を有する下顎第二大臼歯の83.3%で、 セメントエナメル境の高さの2ミ リ下方に根管口が認められるという報告があります。(根管口明示の目安) 高橋ら(1989)の報告によると、樋状根の舌側の象牙質の厚みは、 頬側よりも薄いこと が分かっています。(穿孔に注意を要します) 樋状根管にはイスムスやフ ィンと呼ばれる最狭窄部が存在するため、 それらをファイルなどの 器具で完全に感染を除去することは困難なので、次亜塩素酸ソーダ(NaOCl)を使用して 化学的洗浄で対応していきます。
台状根
上顎大臼歯に見られ、根尖部だけが開離し台状を示します。 複根歯の根が比較的に長い範囲において癒合し、根尖部のみが分かれています。
ニッケルチタンNiTiファイル
神経の通っている根管を拡大・形成する治療器具です。 超弾性の性質を持ち、非常にしなやかなのが特徴で、湾曲した根管への追従性に優れています。ロータリーエンジン(毎分200 から300 の低速回転)で、根管壁の切削を折れやすいファイルの先端ではなく、太い中央付近の側面を使って行います。従来のステンレススチール ファイルでは、弾性もなく、オリジナルの根管への追従性もないため、#25〜#30で根管の形態を損ねるなど、問題が起こっていました。
ステンレスファイル
NiTiファイルと比べ穿通性や切削効率が優れているが、 号数が大きくなると柔軟性が低下します。この両者を組み合わせて根管形成をしていきます。 RTファイル(マニー社) は、ステンレススチール製のファイルながら柔軟性に富んだ、 切削効率も高いファイルです。
Mワイヤー
プロテーパー・ネクスト、ウェーブ・ワンファイル、プログライダーなどに採用されています。 湾曲根管や非常に細い根管においても高い追従性を発揮する優れたフィイルの素材ワイヤーです。
ネゴシエションnegotiation
根尖を穿通する事(根尖病巣がある場合には特に必要である。) 穿通とは、ファイルが解剖学的根尖孔まで根管内に閉塞物がない状態で到達している状態です。 屈曲根は、エンドベンダーでファイルの先端を45度くらい曲げてファイルを押すと穿通します。
グライドパス
エンドモータで拡大する前の、根管の予備拡大(誘導路)の事。 #10 Cプラスファイルをパイロットファイルとして使い、Glide Pathを作れない時、#08、#06を使用。 または、プログライダー(テーパー2.85%)300rpm 2NcmにてGlide Pathを形成する。
イスムス
根管と根管を結ぶ狭小部のことです。扁平な歯根や樋状根等にみられます。その狭窄部は機械的清掃が 困難となり歯髄の壊死組織や細菌などが残存しやすいため、洗浄による化学的清掃が重要となります。
フレアーアップ
根管治療中に生じる痛み、腫れ、咬合痛を伴う急性症状です。急性根尖性歯周炎が起こるのは、 細菌学的刺激、根尖孔のファイル刺激などの物理的刺激、次亜塩素酸ナトリウムや貼薬による 化学的刺激、免疫学的要因などです。
MB2
上の大臼歯の4番目の根管の事です。MBとは近心頬側を意味して、その部に2番目の 細い根管があるという事です。
ダウンパック
マスターコーンを加熱しながら根尖部を根管充填すること。
バックパック
ダウンパック後、根管口までの間隙を流動性のある根充材で充填すること。
逆根充
超音波ダイヤモンドチップを使って逆根管充填窩洞を形成した後MTAセメント等で根尖部閉鎖すること。
逆根管チップ
マイクロスコープ下で逆根管形成をするためのダイヤモンドでコーティングしてある超音波チップです。 根尖部で作業しやすいように屈曲している。
ガッタコア ピンク
サーマプレップ2加温器で加温後、3次元的根管充填をおこなう根管充填固状材料です。
内部吸収
象牙質の歯髄側からの吸収のことを指します。慢性歯髄炎、外傷歯、 乳歯生理的根吸収期以降に見られることがあります。前歯部が好発部位です。
垂直加圧根管充填
加熱軟化したガッタパーチャを垂直方向に加圧し、側枝や根尖分岐を含む根管を 充填します。枝別れがあったり屈曲した根管にもしっかり充填できる方法です。
側方加圧充填法
複数のガッタパーチャポイントをシーラーと併用して、側方に圧をかけて根管充填をする方法です。
BLコンデンサー
根管充填用のプラガーで、根尖部用の追随性に優れたニッケルチタン製 (10mm、15mm部に刻みがある)と、根管口部用のステンレススチール製の2つの先端部を持つ。
ペーパーポイント
国際規格のISOサイズに巻き上げられているペーパーで、 根菅内の乾燥や貼薬に使います。
クラックトゥース シンドローム
歯の不完全破折(若木骨折)の結果として起こる症状の総称です。 咀嚼時の痛み(噛むと痛い)、温度変化による疼痛(しみる)、歯髄炎による疼痛(ズキズキする)等。
機械的根管清掃
ファイルなどを用いて物理的に感染歯質や汚染物質を除去する方法です。
根管洗浄
貼薬や根管充填の前には、次亜塩素酸ナトリウム水溶液とEDTAの交互洗浄をします。その際超音波チップを使いキャビテーション効果を期待して根管内を洗浄します。
キャビテーション効果
洗浄装置の振動により、洗浄液から無数の気泡が発生して、これらの気泡どうしが 衝突する際に出来るエネルギーによって根管内のデブリスが取り除かれる作用の事です。
根管内吸引洗浄法
バキュームに接続した吸引針を根尖付近に設置して、洗浄液を還流させて吸引する方法です。 根尖孔が大きく開いている場合に特に有効です。(2006年、Fukumotoら)。
瘻孔(ろうこう、サイナストラクト、フィステル)
根尖病巣などから膿が排出される穴の事です。ほとんどは、根尖部付近に相当する 歯茎に出てきます(内歯瘻)。
髄管(ずいかん)
髄床底から根分岐部の歯根膜に通じる副根管です。根分岐部病変の原因となることもあります。
側枝
神経管の枝のこと。主根管に対して、ほぼ直角に分岐して歯根膜に通じる枝のことです。
クラウンダウン法
歯冠側から始まり根尖側で終わる根管形成方法です。 これに対して、根尖部から形成する方法をステップバック法という。
フルレングステクニック
ファイルを作業長まで到達させながら行なう根管形成方法です。
意図的再植術
一度歯を抜いて、悪い部分を取り除いてからもう一度元の場所に戻す方法です。 再植術は歯根端切除術が困難な場合(側方の穿孔、第二大臼歯など)、または歯根端切除術で リスクが高い場合(オトガイ孔や上顎洞に近いなど)に行なわれます。
歯性上顎洞炎
歯科疾病が原因で、上アゴの奥にある上顎洞に起こる炎症のことです。 原因としては、虫歯が基で出来た根尖病変、歯周病、インプラントに関連した炎症の波及がなどが考えられます。
歯性病巣感染
口腔内の慢性病変(歯周病、根尖病変など)が原発となり、体の別な臓器や皮膚に二次的な疾患が 発生することを言います。口腔内病変の細菌毒素や細菌によるアレルギー源がもとで、 慢性腎炎、慢性関節リウマチ、リウマチ性心筋障害、アレルギー性皮膚疾患等を引き起こします。
コロナルリーケージ
良好な根管充填が完了した歯であっても歯冠側から根管内に漏洩が生じると、修復前には認めなかった根尖性歯周炎が発症することです。