CT値は、ハンスフィールド値とも言われ、骨の密度(硬さ)を示します。
X線吸収値を 空気を-1000 HU、水を0 HU、固い骨を+1000 HU と規定しています。
CT装置の発明者Godfrey Newbold Hounsfield(1919〜2004年)にちなんで、CT値(CT number)がつけられました。
ボクセル(被写体(生体組織)のなかの小さな単位容積)は画素ともいい、CT値は画素の値を表します。
軟らかい骨質(CT 値が350HU 以下)では初期固定の獲得が困難で、オッセオインテグレーションの獲得が困難となる場合があります。この場合、インプラント体埋入後の治癒期間を延長することにより、良好な骨質と同等の結果を得られると言われています。骨質改善のためにコンデンス(骨緻密化)する場合もありますが、やり過ぎも血行が損なわれるので治りを悪くします。
逆に、硬過ぎる場合(CT 値が850HU 以上)には、埋入窩形成時に切削摩擦による火傷や圧迫壊死による骨吸収を起こしやすくなります。通常以上にドリルの冷却に注意を払い、注水量や注水方法を工夫して手術に臨みます。
ハンスフィールド値(HU)(CT値)によるMischの分類
D1からD4に分類されます。
D1:>1250HU D2:850〜1250HU D3:350〜850HU D4:<150HU
インプラントの周囲は白く(緑矢印 1000HU程度の硬い骨)皮質骨が厚い。
D1は、大部分が皮質骨である、ドリル使用時の感触はカシ材またはカエデ材のような硬さ、
10段階評価で9〜10の骨強度、主に下顎前歯部にみられる。
D2は、皮質骨と骨梁の粗な海綿骨が歯槽頂に厚い層を形成している、10段階評価で7〜8の骨強度、
下顎骨全体および上顎前歯部にみられる。
D3は、歯槽頂部の皮質骨層が薄く、海綿骨骨梁が細い、ドリル使用時の感触はバルサ材 、
10段階評価で3〜4の骨強度(D2の50%程度)、主に下顎臼歯部または上顎にみられる。
D4は、大部分が骨梁の細い海綿骨である、ドリル使用時の感触は発砲スチロール、
10段階評価で1〜2の骨強度、主に上顎臼歯部にみられる。
インプラン周囲の骨は黒っぽく疎(緑矢印 100HU以下)なので、骨の緻密化等の処置が必要となる。
最も硬い骨のD1を赤色、D2を黄色、D3を黄緑色、D4を水色、そして骨ではないD5を青で示すと、
視覚的にわかり易くなります。
医科用ではこのハンスフィールド値を知ることができますが、歯科用CTでは仮想の値で推測します。
■ 現在の骨質の考え方
骨結合の得られたインプラントに咬合の荷重を加えることで、インプラントネック部周囲組織は、 オッセオインテグレーションの亢進とともに骨量と骨密度が増大され、骨質が大きく変化します。
このことは、荷重に対して適応変化をしてくることを示唆します。
■ 骨質に関する研究
長崎大学大学の澤瀬・黒嶋先先らの報告によると、
「インプラント周囲骨の生体アパタイトの軸配向性は、加重を加えることにより、インプラント長軸方向の優先配向を示した。」とあります。
このことは、インプラント周囲の骨質に加重に抵抗できるような変化をもたらしたと言える。