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名古屋で精密根管治療する歯科

歯根端切除術

診療案内
Diagnosis and treatment guide

外科的な根管治療

歯根端切除術とは

外科的な治療方法には、歯根端切除術、意図的再植術(根尖部の手術が難しい場所)などがあります。

歯根端切除術 Apicoectomy は、通常の根管治療をおこなっても、根尖にある病変が消失せず治療効果が期待できない場合、あるいは難治性で治療結果が思わしくない場合に選択する外科的治療方法です。
根管の移動や穿孔・内部吸収のケース、根管充填の質が適切でも、根尖孔外の病変や溢出した根管充填材の表面、歯面などに細菌やバイオフィルムが存在するケースなどが対象となります。
大きな根尖病変のレントゲン像
施術に当たっては、CTレントゲンとマイクロスコープの精査、口腔内の状態、病状経過などを考慮して慎重に進めていきます。その際、病巣そのものだけではなく、病巣に含まれている歯根の一部(根尖より3mm切断が原則)も一緒に切除します。
  • マイクロスコープ
    明るい光の下で、マイクロスコープで拡大された視野を見ながら、特殊なマイクロ用のインスツルメントを使用して行われます。マイクロスコープを使用することで、肉眼で確認できない微小な異常等を観察可能であり診断や治療への貢献度が高くなります。この症例では、歯の内部吸収が見られます。
  • 三次元歯科用CTの活用
    歯根や根管の形態、根尖病変の広がり方やその範囲、周囲歯槽骨の状態、隣在歯との関係などの情報を得ます。施術前に根管やその周辺の内部情報を把握することで、成功率の向上を図ります。
  • 歯根端切除術の要点
    根尖病変の主な原因は根管内の起炎物質であるため、単に根尖部を切除しただけでは根管からの起炎物質の波及が収まるわけではありません。逆根管窩洞形成と逆根管充填の両方が必要です。

適応症

  • 1.
    根管治療で反応しないサイナストラクト=瘻孔(フィステル)がある。
    サイナストラクト(瘻孔、フィステル)は根尖病変から歯肉への膿の出口
    サイナストラクトとは、歯根の周囲に溜まった膿が歯肉から外に出て行く穴のことです。歯根肉芽腫、歯根嚢胞、根充剤溢出による根尖病巣等が該当します。根管治療で反応しないときは、別の歯が原因の場合もあるのでよく精査する必要があります。
  • 2.治療しても反応しない痛みがある。
    根管充填の質が適切である症例は、根管治療で除去できない感染源が原因である可能性が示唆されます。根尖孔外の病変や溢出した根管充填材の表面、歯面などに細菌やバイオフィルムが存在することが報告されており、根管治療で除去できない感染源やその痛みに対しては外科的歯内療法の適応となります。
  • 3.パーフォレーションや破折ファイルなどの問題がある。
    パーフォレーションとは、根管壁に穴が開いた状態の事です。
  • 4. ポストや修復物の除去が難しい症例
  • 5. 根管の閉塞や狭窄、根管内異物などにより適切な根管治療が施せない症例
  • 6. 適切な根管充填後に、経過観察のX線写真上で、根尖病変の拡大がみられるとき
■ 適応ができない場合 (禁忌症)■
  • 1.歯根の長さが短い。たとえ病変が除去できても、咬む力に耐える事が出来なくなります。
  • 2.重度の歯周炎の場合などです。歯周炎が進み歯の周りの骨が溶かされ、根尖病変で根尖周辺の骨も溶かされた状態では、その歯を支える骨がなくなっており、歯そのものの保存が難しくなります。
  • 3.解剖学的要因で手術できない部位もあります。(神経管、上顎洞に近接している。)
  • 4.大臼歯など根尖部への外科的な到達が物理的に困難な症例です。

歯根端切除術の術式

まず初めに、一般診査とカウンセリングの後、根管治療をします。
冠歯頚部に根露出が見られる場合には、咬合のチェックも念入りに行います。(出来るだけ炎症を起こしたり悪化すると思われる原因を取り除きます。)
CBCT撮影により3次元的な精査と治療の可能性を模索します。
歯科用CBCT撮影による3次元的な精査
■ 手術の手順 ■
  • 1.麻酔をかけ歯肉を切開します。嚢胞がないところ、健常な骨のある所に切開線を設定します。
  • 2.歯の根元の骨に小さな穴を開けて(すでに骨が溶けていることも多い)膿の袋を取り除きます。
    鋭匙の底の部分を使い、骨から嚢胞を剥離して摘出します。
  • 3.根尖病巣の原因となっている歯根の先端を3mm程度切断します。
    根端を丸めるようにラウンドバーで除去すると、歯根膜から嚢胞移行部の病巣を除去しやすくなります。
    ※ Kimらは、根尖を 3mm 切除することにより、根尖分岐は 98%、側枝は 93% が除去されると報告しています。切断により、複雑に分岐している根管の細菌感染を取り除きます。
  • 4.超音波ダイヤモンドチップで逆根管充填窩洞を形成した後、MTAセメントをつめます。
    逆根管充填材はMTAセメントのほかに、スーパーボンド、光重合レジン、EBAセメント等などがあります。
    超音波レトロチップを用いることで根管に追従した約3 mm の窩洞を形成することができ、逆根管充填材の厚みを確保できます。予め充填に適した粘稠度に調整された、ペーストタイプのMTAの水硬性セメント(エンドセム MTA premixed)が使いやすく便利です。
    顕微鏡を用いて、切断面に破折、副根管、充填した際の周囲への漏洩がないかを観察します。
  • 5.
    歯肉を元にもどして縫合します。
    歯根端切除術
    術中
    手術の予後
    術後3か月
    従来は唇側に約45度の角度を付けて斜めに根尖を切除したが、マイクロスコープを応用した歯根端切除術では、歯軸に対してベベルのない切除で確実な根尖部の封鎖処置が可となりました。
    逆根管充填材として強化型酸化亜鉛ユージノールセメント SuperEBA、 MTA セメント、接着性レジンなどが使用されています。

マイクロスコープ使用時の要点

  • 1.根管内汚染物の除去と洗浄を手術前にしっかり行っておきます。
  • 2.歯根端切除術に当たっては、不良肉芽、根尖部の感染組織の徹底的な除去をします。
  • 3.逆根管形成と、MTAセメントによる逆根充を正確に行います。
    歯根端切除術では、除去せずに残した歯根部分に感染源が残存すると、病変が再発する恐れがあるので注意が必要です。
  • 4.緊密な縫合をします。
  • 5.術後においても十分な創面の洗滌と咬み合せのチェックも行います。

マイクロスコープを使った場合と肉眼の場合での成功率の違い(Setzer FC et al. 2010)

様々な治療データから、マイクロスコープを使用した場合の方が大幅に優れています。
マイクロスコープを使った歯根端切除術の成功率  94%
通常(肉眼)の歯根端切除術の成功率        59%
1990 年代よりマイクロエンドサージェリーと呼ばれる術式が普及してきました。マイクロスコープを使って、根尖の切断を歯軸に垂直にほぼベベルなしで行い、超音波装置を使用して逆根管充填窩洞の形成をし、生体親和性の高い材料で緊密な逆窩洞充填を行うというものです。
これらはMicrosurgery用のインスツルメントや材料のみならず、高倍率で拡大視することが精度の高い処置を行う上で重要であることを示しています。

予後不良の原因

  • 1.感染歯根(感染セメント質、感染象牙質)、根尖病巣の残留がある。
  • 2.亀裂がある
  • 3.逆根管充填の不備(材質やテクニック)
  • 4.根尖病巣と歯周ポケットが交通して除菌できない場合
    それらの複合要因