■ 手術に対するリスクファクター ■
手術中に合併症発生を招く危険性がある疾患や、あるいは手術操作が困難なものです。 高血圧、心疾患、糖尿病、肝硬変、腎不全、喘息、慢性閉塞性肺疾患、血液疾患、出血性素因や、不良な骨質、骨量不足、角化粘膜不足、喫煙などです。
■ オッセオインテグレーションの獲得と維持に対するリスクファクター ■
手術創の治癒不全を招き、最終的にはインプラント体周囲の骨治癒に異常が起こるため、 インプラント体のオッセオインテグレーションが獲得されなかったり、あるいは不完全な獲得 に終わってしまう危険性があります。また、メインテナンス中、早期にオッセオインテグレーションが 破壊されてインプラント体が脱落するリスクがあります。 糖尿病、肝硬変、腎不全、骨粗鬆症、膠原病、精神疾患、ビスフォスフォネート系薬剤・ステロイド薬・免疫抑制剤などの服用、 埋入部位への放射線治療、不良な口腔衛生状態、パラファンクション、口腔乾燥、喫煙、クラウン−インプラント長比率、角化粘膜の不足などです。
■ 咬合状態によるリスク ■
開口量 (上下顎間距離) が不足、クリアランス7mm以下、顎位不安定、パラファンクション(歯ぎしり、食いしばりなど)があるなどが問題となります。
■ 上部構造製作と維持に対するリスクファクター ■
インプラント体の埋入は可能でも、咬合、歯列の異常により上部構造が製作できない危険性を示すものと、 インプラント補綴を行う部位の軟組織が十分に確保できないことで、審美的な問題が発生する危険性を示すものがあります。 精神疾患、顎領域の運動麻痺・痙攣、 バーティカルストップの欠如、アンテリアガイダンスの欠如、垂直的顎間距離の不足、バイオタイプがthin type の粘膜、 高い審美性の要求、パラファンクション、高いリップライン、顎関節症などです。なによりも口腔清掃をしっかり行い、定期健診をすることをお勧めします。
■ インプラント周囲炎 ■
インプラント周囲炎はオッセオインテグレーションが達成された機能下のインプラントにおいて、 細菌感染や過重負担などの結果生じたインプラント周囲の骨破壊を伴う炎症性病変です。チタンは生体適合性がよく、特にリンやカルシウムに対する高い吸着能を有するが、その反面で口腔常在菌が付着しやすく、インプラント周囲炎を引き起こしやすい性質を持っています。 臨床所見は、インプラント周囲粘膜の発赤、腫脹、プロービング時の出血や排膿、 プロービングデプスの増加、周囲組織の退縮、動揺などがあげられます。 前処置としての歯周病治療がされていない、プラークコントロールが不十分などが原因で生じます。
「炎症の存在下ではオーバーロードによってプラーク誘導性の骨吸収を生じる」という報告があります。Naert I, Duyck J, Vandamme K.2012
インプラント周囲組織に生じる炎症性病変は、インプラント周囲粘膜炎(peri-implantmucositis)とインプラント周囲炎(peri-implantitis)があります。その主な原因は、細菌性プラークであり歯周病の部位から検出される細菌叢に類似していることが報告されています。