マイクロスコープを使いながら根管治療をすることを「精密根管治療」と言います。
「マイクロエンド」とも呼ばれています。
レントゲン(デジタル、歯科用CT)、マイクロスコープなどを用いて状態を診査・診断します。
レントゲンでは、根管の彎曲,根管の逸脱,穿孔や歯根破折の有無,そして根尖病変による骨欠損の広がりなどについて読影します。
マイクロスコープの使用により視軸と光軸が一致することで、根管内部まで明瞭にかつ拡大された状態での治療が可能となりました。
問診やその歯における根管治療の既往歴をチェックしておきます。
さらに、視診、打診、触診、動揺度、歯周ポケット、温度刺激診など詳しくその根管の情報を取得します。
前処置として、虫歯の本体である軟化象牙質(病的歯質、感染歯質と呼ばれる)を十分除去し、
周囲を消毒した後、ラバーダム防湿をします。以前、根管治療をしたことのある(再根管治療)場合、かぶせ物の除去、土台 (コアーやファイバー) の除去、ガッタパーチャ―(根充剤)の除去をします。もし虫歯が残存すると、虫歯菌の根管内への侵入が生じるだけでなく、仮封の漏洩経路にもなり根管に感染が生じます。歯頚部に深い虫歯が存在する場合や不良修復物が入っている場合も象牙細管を通じた漏洩が生じるため注意が必要です。歯質の一部が歯肉縁下まで欠損している症例では、隔壁を作って薬液の漏洩を防ぎます。
髄腔開拡後にも虫歯の感染層である軟化象牙質が残存すると、虫歯の細菌が根管内への侵入するだけでなく、仮封の漏洩経路にもなり根管に感染が生じてしまいます。十分な除去が必要です。
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1.根管口明示(アクセスキャビティ プレパレーション)
根管治療においては、最初に根の入り口を確認(根管口の確認)するところから治療が始まります。
超音波チップを用いて、丹念に根管口を探索していきます。超音波チップは根管の探索のみならず、根管壁の切削、根管洗浄、外科的歯内療法などにも利用でき有用です。
平均的な歯根長は12mmです。根管口の拡大はその上部1/3の約4mmを目標とします。
根管口が一方向からすべて見えるようにします。根管に直線的にアクセスするためのストレートライン ( フレア形成用ファイルや超音波チップ等で根管口付近の張り出している象牙質を削除しファイルがまっすぐ入るように形成 ) を確保します。
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2.ネゴシエーション(穿通性の確認)
穿通性の確認には手用#8または#10を用います。(15%EDTAを配合しているグライドなどを併用)
根管の内部の汚れの確認、根管先端からの浸出液の有無の確認などを行います。
奥まで汚染されて、膿などの排出が確認出来る事があります。
根管の中からマイクロスコープ下で、歯の神経、汚染された古い充填材料、細菌感染した汚染物などを細い針状のファイルという器具で丁寧にに除去していきます。
根の下に病変がみられる場合には、上から消毒のための道(アクセス)を穿通Negotiationすることが大事です。「Cプラスファイル」という通常のKファイルに比べ垂直圧に対する抵抗が強く曲がりにくく、先端方向に力が伝わりやすいファイルで穿通します。
J字やY字などの根尖付近での根の湾曲や分岐は、根管のトランスポーテーション(根管の
湾曲部を形成して根管の直線化が起こってしまう)や 器具破折の恐れが生じるので、
エックス線でよく確認の上、始めに根管に挿入する 細いファイル(パイロットファイル)
を慎重に操作します。
実際の臨床では、ネゴシエーションは根管の探索を行い、さらに作業長測定と、ニッケル
チタンファイルを用いた根管形成を行う前のグライドパスも同時に行っています。
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3.
クライドパス glide path(予備拡大、根尖部までの誘導路)
手用またはNiTiファイルで#15〜#20くらいまで拡大します。
「プログライダー」という根管拡大形成用ファイル(ニッケルチタンファイル)使用が効率的です。
この操作により根尖孔までの連続したスムースな進入経路をつくることは、効果的な洗浄が行え、ロータリーファイルがスムーズに使える、根管充填もしやすくなる等のメリットがあります。
根管口を探索、ロータリーエンジンで根管形成、垂直加圧根管充填の手順で行います。
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4.
根管形成
根管形成の目的は感染源の除去のみならず、効率的な根管洗浄や緊密な根管充填を行うための適切な根管形態を付与することです。さらに、緊密な根管充填を行うためには、根管に適切なテーパーを付与したフレア形成を行います。
汚れている部分の根管壁は、手用のファイル、ニッケルチタンのエンジンファイルなどで綺麗にしていきます。緊密な根管充填を行うためには、根管に適切なテーパーを付与したフレア形成を行います。
最初に手用のハンドファイルを使用すると、湾曲度、狭窄度、根尖孔径、 根管長などの情報を得ることができ、根尖外形に適したNiTiファイルを選択できます。
髄角部、イスムス、フィン、扁平状根管、樋状根C- shapeは、歯髄の取り残しや汚染の残り易いところです。
マイクロスコープを使ってこれらの微小な細菌巣を徹底して除去していきます。
ガッタパーチャーポイントの除去にはGPR(マニー社製)、超音波チップなどを用いています。
超音波チップは水をかけながら振動を与えて綺麗にしていきます。根管壁の汚れや古いポイントを除去をするのに優れています。
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※ GPR(ガッタパーチャリムーバー)は、根管中央部あたりまでは ステンレススチール製の1S(#70)、2S(#50)を 使用します。根尖側1/3についてはNi-Ti製の3N(#40)、 4N(#30)を使用します。先端約5mmを形状記憶特性にしたことにより柔軟性が高まり、疲労破断耐久性が高まりました。
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※他の除去方法は、マイクロエキスカによる摘出方法、超音波チップによる方法などがあります。NiTiファイルは、根管の先端が屈曲していても追随性が高いため(湾曲根管、複雑な根管に対応できる、レッジ形成や、根管内穿孔の危険が少ない)理想的なファイリングが可能です。
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※
Ni-Ti 合金は超弾性を有するめステンレススチールと比較して非常に柔軟であり、湾曲根管への追従性に優れています。また、Ni-Ti 合金は材質の軟らかさなどからNi-Ti 手用ファイルでは切削効率が低いため、低速回転マイクロモーターで連続回転させることで切削効率を向上させたNi-Ti ロータリーファイルを用いるのが主流となっています。根尖側へファイルの太さを減じながら堀すすむ「クラウンダウン法」で根管拡大をします。最初に拡大された部分は、清掃が部分的に終わっているため、二回目の拡大時に、ファイルは1回目のZONE を通過しても汚染されにくいため、根尖孔から汚物の押し出を、かなりの割合で防止できます。
当院では、プロテーパー、RaCeなどを使用しています。
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●根管拡大時には、次亜塩素酸ナトリウム溶液NaClO、EDTA(キレート効果によりスメア層除去、潤滑効果)を併用します。「クライド」という15%EDTA剤を使い、根管壁を脱灰し軟化させます。キレート効果によりスメア層除去や、石灰化した根管の拡大が容易になります。
有機質の存在下ではNaClOの効果が源弱するため、根管内にたえず新鮮な溶液を追加します。
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●緊密な根管充填を行うためには,根管に適切なテーパーを付与したフレア形成を行います。側方加圧根管充塡法では、テーパーが7/100(0.07, 7%)の根管で緊密な根管充填ができることが報告されています。
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●根管長をルートキャナルメーターで測りながら作業を進めます。ROOT ZXなどの計測器(電気的根管長測定器))を用います。
※ ルートZXは、2つの周波数で根管インピーダンスを測定することにより、根尖部の位置を高い精度で検出できます。06テーパーで#30号という大きさの根管形成(個々の根管により号数が違う)をしていきます。
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■ひび割れている破折線(クラックライン)をマイクロスコープで発見することもあります。
そのような場合、特殊セメント(MTAセメント)で修復可能な事もあります。完全に根が分離していたら無理です。
※ MTAセメント(商品名 プロルート)は、歯髄に直接触れるケースに非常に優れた材料で、覆髄や断髄、パーフォレーションのリペアや根尖が解放されているケース、小さなひびの修復、外科処置などに用いられます。MTAの長所としてあげられるのは、骨組織に対する生体親和性です。(MTA の上には、セメント質が直接再生されることが組織学的に報告されています。)
※ エンドセム MTA premixed は、予め充填に適した粘調度に調整された、ペーストタイプの水硬性セメントです。
ヒビに沿ってバイオフィルムを形成していて感染症状が歯肉に現れ炎症やフィステルが見られる場合もある。レントゲンで歯根のヒビに沿って骨の吸収がみられる場合には、炎症の波及が示唆されるので予後不良です。
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5.
根管の洗浄Irrigation
感染源の除去、残存歯髄の除去、無機物削片の除去を行うため、注水された水や薬剤が根管内で撹拌・還流する「キャビテーション効果」により、根管内の異物や汚物が浮遊して、排出します。
感染の排除は、次亜塩素酸ナトリウム溶液などによる化学的清掃と、ファイリング操作などによる機械的拡大が主体となります。
音波振動装置のジロソニックを用いて効果的に根管洗浄(根管内に残った不要なスメア層除去)します。
1,500〜3,000㎐の周波数のサブソニック(音波)振動と左右0.5mmの振動を与えることで根管洗浄、根管拡大を行います。
ファイルによる機械的清掃だけでは断面が円形で、根管の断面形状に合わず汚れが残ってしまいます。そこでジロソニック、EDTAなどの洗浄により、ファイルの細かな削りカス、菌を除去します。
洗浄液を満たした根管内に超音波ファイルを挿入して、根管壁に接触させずに振動を加える洗浄方法もあります。
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※キャビテーション効果とは、装置の振動により洗浄液から無数の気泡が発生してこれらの気泡どうしが衝突する際にできるエネルギーによって洗浄される効果のことです。
根管内分岐やの側枝に対しても十分な洗浄をすれば根管充填の仕上げに好影響を与えます。
次亜塩素酸ナトリウムNaOCl、EDTAなどで洗浄して、根管内外をできるだけ無菌化していきます。
根尖孔外への洗浄液の溢出が少ないため、側方に孔のあるタイプり洗浄針を使っています。
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※次亜塩素酸ナトリウムには強力な殺菌作用と有機質溶解作用があり、根管洗浄に極めて有効です。
次亜塩素酸ナトリウムは有機質に曝露すると効果が薄まるので新鮮なものを大量に使います。一方、EDTAは少量で充分です。
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※EDTA は無機質溶解作用があり、根管壁に堆積したスミヤー層を効率的に除去できます。スミヤー層は根管充填の封鎖性を低下させる要因になるため、丁寧な除去が必要です。スミヤー層中あるいはスミヤー層下に細菌が残存している可能性があるため、EDTA でスミヤー層を除去した後、さらにNaClO で洗浄します。
ファイルによる機械的拡大が困難な部位に存在する歯髄残渣や感染源を溶解除去する効果が期待できます。機械的なファイルによる汚染部除去だけでは、 円形とは限らない根管をきれいにではきないためです。断面が円形なファイルが根管内壁の形状に合わないため、接触して清掃出ていない可能性が高いのです。
従って、超音波による洗浄、薬剤による洗浄を根管拡大ごとに繰り返します。汚染物質がある場合、薬剤を入れると中から泡が出てきます。薬剤と根管内の異物と反応しているためです。
このように、汚染物質である残存歯髄や出血・排膿など、有機質の存在下では次亜塩素酸ナトリウムの効果が減弱するので、根管内にたえず新鮮な溶液を追加する必要があります。
この操作を十分行う事により、 体の治癒力が期待できるのです。 (再根管治療の場合、最終洗浄は#10号Kファイルを根管内に入れ、根尖から1mm出したファイルに超振動を与え消毒することもあります。)
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※基本的な根管の洗浄は、17%EDTAと次亜塩素酸ナトリウム水溶液(NaOCl)2.5〜5.25%の交互洗浄を行います。 根管拡大中の交互洗浄は、EDTA洗浄後は多量のNaOClで洗い流します。 根管充填直前の最終洗浄では、最後のEDTAは1分間根管内に留めます。
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6.貼薬
最後に貼薬(水酸化カルシウムCa(OH)2など根に薬を付ける)、仮封(かりどめ)をします。
貼薬は、レンツロやNiTiロータリーファイルを逆回転にして行います。
約1週間(体の治癒の期間)おきに洗浄、貼薬をして根管の無菌化と、根尖病巣の治療をしていきます。
この貼薬処置により器械的拡大だけの時に比べ根管内の無菌化率が上がり(50%→90%以上)ます。
水酸化カルシウムの作用:殺菌消毒、Phによる有機質溶解、血管収縮作用、石灰化誘導、浸出液抑制
生体刺激性が少なく作用が長時間持続
※ 水酸化カルシウムを根管貼薬後にNaClOによる根管洗浄を行うことより、NaClO 単独での根管洗浄と比較して有機質溶解作用が高まると報告されています。( Wadachi R, Araki K and Suda H. 1998、
Hasselgren G, Olsson B, Cvek M. 1988 )
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■仮封剤の厚みに関して
仮封が不十分で漏洩が生じると、根管の拡大・形成は細菌が根尖まで入りやすくするために行っているようなものになります。一般的には3mm以上の仮封の厚さが推奨されています。咬合面だけでなく隣接面での十分な厚さの確保も重要です。また、仮封に綿花線維が混入していると漏洩の原因となります。繊維がなければ21日でも漏洩は全く生じないが、3〜5本の繊維が入るだけでわずか7分で漏洩が生じるという研究もあります。
また、仮封材の厚みを確保するためには、根管壁に沿って角型の充填器で圧接します。
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7.
根管充填
最終仕上げで根管充填(こんかんじゅうてん)Obuturationをします。
「根管充填」とは、再び根管が細菌などで汚染されないように密閉する治療ことです。
その目的は、根管内に残存した細菌の封鎖と治療後の根管内への細菌再感染防止です。
根管充填の材料は、Gutta Percha、レジン系シーラー、MTAセメントなどを使用します。
各ステップにおいて、マイクロスコープで確認しながら治療を進めていきます。
※ MTAセメントは、覆罩や断髄、パーフォレーションのリペア、根尖が開放されているケース、外科処置などに用いられます。
上記写真は、ヒートプラガー(先は根尖から3mm以上引いた所に止める)という瞬間的に200度程度になる器械で、ガッタパーチャを暖め、連続的なウェーブを起こし(CWCT法)、根管内を緊密に充填します。加熱は2秒間を間欠的に行い、各種組織へのダメージが最小限となるように配慮していきます。
再び細菌が繁殖しないようにすき間(死腔)を残さないよう(根尖部を三次元的に根充)、ガッターパーチャーを軟化して加圧、注入します。米国の多くの根管治療専門医が使う方法です。
緊密な根管充填を行うためには、根管に適切なテーパーを付与したフレア形成を行います。
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※前処置として17%EDTAにより、1分間スメア層除去を行った後、根管充填に移ります。スメア層(象牙細管に切削片が詰まった層)には、象牙質削片、細胞破片、細菌などが含まれています。それらは、根管充填の封鎖性を低下させる要因にもなるため、EDTA でスメア層を除去します。
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※根管充填とは、きれいになった根管に、再び細菌等が入らないように、最終的な詰め物である根管充填材で埋めて、隙間なく密閉する処置のことです。根管拡大には、ステップパック法とクラウンダウン法(太いファイルから細いファイル)根管充填には、側方加圧根充(ラテラルコンデンセーション)、垂直加圧根充(バーチカル)などがあります。また、根管充填には、歯との接着性のあるレジン系シーラー(高い封鎖性がある)を併用することが多くなりました。(リアルシール、AHプラスなどを併用)
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※根尖病変が大きくても、根尖孔外に貼薬しないようにします。異物として過剰な免疫反応が起こるためです。
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※CWCT法とは、Cotinuous Wave Condensation Techniqueの略で、垂直加圧根管充填法のことです。最小限のシーラーで根管充填ができ、封鎖性も良いことが利点です。また適応範囲が広いことが特徴です。しかし、犬歯のように長い根管、樋状根管、根未完成歯、根尖が破壊されている歯などには不向きです。
1. ダウンパックは、メインポイントをαで加圧しながら根尖部へ充填します。
2. 次に、バックパックは、根管口までの間隙を流動性のある充填材をβで充填します。
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※側方加圧根充とは、メイン根充ポイントの間にできた空間に細いアクセサリーポイントを側方に圧をかけて押し込んで密封する根管充填方法です。垂直加圧根充のできない部位に行います。長い根管などに向いています。
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※リアルシールは、レジロンによる「リアルシール ポイント/ペレット」と、セルフエッチング、デュアルキュア(光 ・化学重合)するので、根管密着閉鎖に適しています。
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※AHプラスは、レジン系根管充填用のシーラーです。すぐれたX線不透過性あり、低収縮かつ低漏洩により高い封鎖性を保つだけでなく、自己接着性を有することにより長期にその封鎖性を維持することができます。 シリンジ タイプでは練和の手間を省き、直接充填できます。
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※ニシカキャナルシーラーBG マルチは、優れた封鎖性と高い生体親和性を持ち、根管充填シーラーだけでなく覆罩剤としても使用できます。
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※
クラウンダウン法は、根管拡大・形成法のひとつで、歯冠側から根尖側方向に根管を拡大・形成していく方法です。根の先端1〜2ミリの処置が治療の成否を左右します。根尖への汚染の拡大を軽減させ、ファイルにかかるストレスも最小限に抑えられます。テーパーの大きいファイルから徐々にテーパーの小さなファイルへと変えて拡大・形成します。主にニッケルチタンファイルを用いるときに行います。 ガッタパーチャとは、ゴムのような樹脂でできた根管充填材のことです。マレー半島に野生するアカテツ科植物の乳液を凝固精製した物質です。適度な弾性と柔らかさを備えた根管充填用に作られた規格ポイント、アクセサリーポイントなどがあります。
テーパー度の大きい(04テーパー、06テーパー)ガッタパーチャポイントは、エンジン用NiTiファイルによる根管拡大形成後の根管充填に適しています。
垂直加圧根管充填器 スーパーエンド アルファ(電熱式根管プラガ)の3次元的根管充填の方法
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1.
マスターポイント挿入します。スーパーエンド アルファを用いて切断します。
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2.
マスターポイントを、スーパーエンド アルファを用いて加熱し、軟化させます。(ダウン パック)
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3.
スーパーエンド アルファを引き抜き、ハンドプラガ(BLコンデンサーなど)を用いて、根管内を整えます。(アピカルプラグ)
続いてβ(歯科根管材料電気加熱注入器)を用いて根管口までの間隙をペレットタイプの根充剤で加熱流動化してバックパックします。一気に充填すると気泡が入りやすいので、2〜3mmずつ積層で根管口部まで充填します。
このように確実な根管治療を行うことで、その歯は、長期にわたり快適に噛む事ができ、機能と美しさをキープできるのです。
根管治療では、治療中あるいは治療後の感染を減らすことが、成功の1つのカギになります。
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1.虫歯の取り残し 根管の操作前に虫歯を丁寧に取り除きます。
その際、エキスカベーターなどを使って手指感覚を利用して取り残しがないかを確認します。
さらに、う蝕検知液を使って染色部を削除することにより、感染部の取り残しを防げます。
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2.根管開放 急性期以外の根管開放は行いません。膿やガスを排出して根管内圧を下げ、
急激な痛みが軽減したら根管開放を終了します。
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3.仮封の不良 なるべく3mm以上の厚みを持たせます。
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4.汚染物の根管挿入 器具の汚染や捜査中の感染などをなくします。ラバーなども有効。
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5.修復後の再感染 修復物下からの汚染の侵入を定期チェックします。
良好な根管充填が完了した歯であっても歯冠側から根管内に漏洩が生じると、修復前には認めなかった根尖性歯周炎が発症する可能性があるので注意が必要です。根管充填に使用するガッタパーチャポイントは弾性が低く、シーラーや歯質とも接着しないため、辺縁封鎖能力はそれほど高くありません。従って、修復物脱落や辺縁部からの虫歯で容易に根尖側へ漏洩(コロナルリーケージ)が生じます。根管壁への接着性を有するとされた接着性の根管充填材も開発されましたが、完全に漏洩を阻止するには至っていません。
長期経過した根管充填後に症状が出たり、根尖部にX線透過像が現れたりした場合には、コロナルリーケージが原因している可能性があります。根管充填後のしっかりとした仮封、歯頚部からの二次う蝕予防、早期の修復の完了などが大切となります。
ポスト孔の形成に際しては、回転切削器具や手用ファイルを用いる方法よりも、熱したプラガーでガッタパーチャ除去する方法の漏洩が少ないと報告されています。
実験室レベルでは早くて30日、遅くても90日程度で根尖まで細菌感染が生じると報告されています。イスムスやフィンの封鎖が十分でなければ、根尖までの漏洩はさらに短期間で生じます。それを早期発見して解決する必要があります。