歯周病は、歯周疾患とも呼ばれ、歯肉病変と歯周炎とに大別されます。
プラーク(歯垢)などが原因で発症します。
歯周病原細菌によって引き起こされる感染性炎症性疾患です。
そして歯周組織(歯肉・歯根膜・セメント質・歯槽骨などの歯を支えている土台)が破壊されて進行するまでほとんど自覚症状がなく、気がつかないことが多いのです。近年、歯周病は、生活習慣病として位置づけられており、食習慣、歯磨き習慣、喫煙、さらに糖尿病などの全身性疾患との関連性が示唆されています。
日本人の成人のうち、5人に4人(約80%)以上が歯周病にかかっているといわれ、歯周病は歯を失う最も大きな原因となっています。
平成28 年歯科疾患実態調査では15 ~ 25 歳の間で4mm 以上のポケットを有する患者が急速に増加していることが認められています。歯肉出血を有する者の割合は15 ~ 29 歳では30%を超え,30 歳を過ぎると40%を超えます。若年期から歯周病に対する予防あるいは重症化予防を行うことが今後さらに求められます。
さらに令和4年歯科疾患実態調査では、4mm以上の歯周ポケットを持つ人の割合は、全体では47.9%です。残存歯数の増加とともに高齢者において4mm以上の歯周ポケットを有する者の増加が顕著です。
何故こんなに多くの方が歯周病にかかってしまうのか
歯周病検査は、歯周病の進行程度や原因を把握し「正しい診断」と「適切な治療計画」を立てるための情報を得るために行います。
歯周病の有無、進行状況、リスクファクター(歯周病の進行を促す因子)、予後の判定などを調べます。
問診、視診・触診・打診・エックス線診査、歯垢の染め出しPCR(歯の清掃状態、O'Leary のプラークコントロールレコード)、歯周ポケットの測定( 精密検査時には 1歯4点以上の計測を基本とし、必要に応じて測定点を増加させます )、歯肉の出血の有無(プロービング時の出血BOPの有無)、アタッチメントレベル、歯肉縁下歯石の付着状態、動揺度検査(Miller の歯の動揺度 0 度〜3 度の分類)、口腔内写真(文章や数値で表現するのが難しい口腔内の状態を正確に記録できる)などで歯やその周りの状態を調べます。
口腔内のカラー写真撮影は、文章や数値で表現するのが難しい口腔内の状態(とくに歯肉や咬合の状態など)を正確に記録することが可能です。その他、プラークの細菌検査(歯肉縁下プラーク)、歯肉退縮 (Millerの歯肉退縮の分類)、根分岐部病変の進行度、歯肉溝(歯周ポケット)滲出液の検査、唾液の検査などがあります。
※ プローブ挿入後の出血量 BOP と歯周病の活動性は比例します。
※ アタッチメントレベルとは、セメント- エナメル境(CEJ)などの基準点からポケット底までの距離を計測した値で、歯周病の進行と改善の程度を知るための指標となります。
咬合に関しては、不正咬合、早期接触や咬頭干渉などによる外傷性咬合を調べます。
奥歯の根の分岐部(根分岐部病変はレントゲンやファーケーションプローブ等で検査)や、歯肉の幅や量、咬み合わせ等についても丹念に調べます。 生活習慣病と言われる歯周病では、食生活や睡眠時間、喫煙の有無、持病(糖尿病、骨粗鬆症など)についても重要な調査項目となります。
歯周ポケット(歯と歯肉の境目にある溝)の深さを測定するプローブです。その時のポケットからの出血の有無も見ます。先端には目盛りが付いています。目盛りの刻みは1mm刻みのもの、数mmごとに刻みのあるもの、判別しやすいようにカラーで色分けしてあるものなどがあります。
■ Lindhe とNyman の根分岐部病変分類
根分岐部病変とは、歯周病が進行して歯槽骨が吸収し、根分岐部まで組織破壊が達した状態を言います。
1 度:水平的な歯周組織の破壊程度が歯の幅径の1/3 以内のもの
2 度:水平的な破壊程度が歯の幅径の1/3 を超えるが、根分岐部を歯周プローブが通過しないもの
3 度:完全に根分岐部の付着が破壊され、頬舌的あるいは近遠心的に歯周プローブが貫通するもの
プラークコントロール、
歯石除去(スケーリング&ルートプレーニング)、詰め物・被せものによる固定治療、薬(抗生物質)による歯周病治療、歯ぎしり治療、噛み合わせの改善、
生活習慣・食生活の改善などがあります。
※ スケーリング ルートプレーニングSRPとは、scaling root planing の略号で、
歯根と歯肉の間の溝(歯周ポケット)に入り込んだ歯石(縁下歯石)や炎症を 起こした組織(不良肉芽)を専用の器具(ハンドスケーラー、超音波など)により掻きだす治療法です。その後、歯根面を凹凸なく滑沢(ルートプレーニング)に仕上げます。こうすることで再び汚れを付きにくくします。
手で根面の歯石を取り除くのに用いる「グレーシーキュレット」というハンドスケーラー(適用部位に応じた刃を持つキュレット)です。歯肉縁下深部の歯石除去や歯肉縁下、歯根面の仕上げに使用します。
比較的軽い歯周病であれば、歯や歯の周りを清潔に保つ歯周基本治療を続けることで治すことができます。しかし、炎症が歯肉の奥まで進行し、歯周組織の破壊がひどい場合には、
歯周組織を回復させるための歯周外科手術が必要となります。
治療に際しては歯周病の病因因子とリスクファクターを明確にして、さらに、全身的問題と生活習慣を含む患者背景も考慮する必要があります。
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STEP.1:検査(基本・精密検査、レントゲン診査など)
まず、症状に対する応急処置をします。治療計画を立て、治療方針をご相談します。
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STEP.2:プラークコントロール
プラークコントロールの基本は、あなたの毎日のハミガキです。
あなたに合ったブラッシング方法を指導します。
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STEP.3:歯周基本治療(原因除去療法)
プラークコントロール(患者様:歯肉縁上+術者:歯肉縁下)により炎症を緩和して、
歯石の除去、咬合調整、プラークリテンションファクターの除去、暫間固定などを行うことにより、歯周病の原因を取り除きます。
すべての歯周病の方に行われるものです。
※歯周基本治療(STEP.1〜STEP.3)を経てSTEP.4の再検査の結果、
完治が困難だった場合は、次のSTEP.5に進みます。
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STEP.4:再検査
検査結果を基に、再度治療計画を立てます。基本治療の効果、治療の成否、治療に対する反応などを再評価します。
重症で症状が改善しない場合は歯周外科手術が必要です。
病状が進行する危険性の高い部位、診断が難しい部位については必要に応じて歯周精密検査を実施ます。
基本治療で完治した場合は、メインテナンスに入ります。
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STEP.5:歯周外科手術(歯周病の中等度〜重症の時、必要に応じて)
歯周病の原因を取り除いても治らないほど重症な場合、歯周外科手術が必要な場合があります。
◆歯肉剥離掻爬手術(フラップ手術)
歯肉剥離掻爬(しにくはくりそうは)手術は、フラップ手術とも呼ばれています。
歯肉をめくり( 骨膜を含んだ全層弁、または骨膜を骨面に残した部分層弁で剥離 )、歯根の奥深くについた歯石を除去、不良な病巣の肉を除去して再び縫合して戻し、歯周ポケットを取り除く(除去あるいは減少する)手術です。手術後一次的な歯肉の腫れや出血があり、その後に歯周ポケットは浅くなるものの、歯茎が下がります。保険適応で、1歯2,000円程度です。
アピカリーポジションド フラップ法 (歯肉弁根尖側移動術) は切除療法で骨整形術と併用して行われることが多いです。浅い〜中等度の歯周ポケットのある水平的骨欠損に対して行われます。歯肉縁下カリエスがあり歯冠延長したい場合にも行われます。歯周の安定度が増しますが、歯茎が下がり歯冠が長くなります。
◆歯周組織再生療法(EMD法・リグロスなど)
歯周再生療法、骨移植法とは、中等度以上の歯周病で失われた歯周組織を元に戻す治療です。
すなわち歯周病で破壊された歯の周りのセメント質、歯根膜、歯槽骨などを再生する治療です。
そして歯の周りの歯肉は蘇り、プラークコントロールしやすい歯肉になります。
エムドゲイン(EMD法)は、スウェーデンで開発された歯周組織再生用材料です。
リグロスは、遺伝子組み換えのヒトbFGF(塩基性線維芽細胞成長因子)を有効成分とする世界初の歯周組織再生医薬品です。再生療法の場合、抜糸まで3週間ほどかかることが多く、手術に対する反応性炎症により歯肉の腫れや出血が強くなる傾向があります。骨移植法は、自家骨を採取すると手術野が2箇所となり、痛みや腫れを伴う手術による体の負担が大きくなります。
◆歯肉歯槽粘膜形成手術(遊離歯肉移植術FGG・結合組織移植手術CTG・小帯切除など)
抜歯などにより陥没した歯肉にボリュームを与えたり、露出した歯根面を歯肉で覆うことが出来ます。審美性を回復する、清掃性を良くすることで歯周病の進行を抑制するなどの目的があります。FGG、CTGは、上アゴの裏側(口蓋部)などから移植片採取し、手術後の痛みや歯肉の腫れがあり、FGGでは移植部にパック(歯周包帯)を施すので手術後1か月程度は食事がしにくくなります。
小帯切除の場合、特に下顎頬小帯切除では神経損傷に気を付けます。
※歯周外科手術は、外科処置に伴う痛み、腫れ、出血、合併症の可能性があります。
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STEP.6:メインテナンス
歯周病は再発しやすい病気です。お口の健康を維持するためには、定期的なクリーニングと健診が必要です。特に中等度以上の歯周炎の完全な 治癒は難しく、積極的な治療終了後も長期間のSPT 、歯周病重症化予防治療あるいは メインテナンスを行うことが重要です。